膵臓は本来、食餌を消化するのに必要な蛋白分解酵素などの消化液を腸内に分泌して食餌中の栄養素の分解を助けて腸からの消化吸収に役立つ臓器です。
しかしながら膵臓がいったん炎症を起こすと膵管の傷害によって周囲に膵臓の酵素が漏れ出てしまい血流にのって全身の循環にまわると自分の他の臓器の消化(自己消化)を引き起こし多臓器不全に陥ってしまいます。
症状
腹部の痛みを訴え、激しい疼痛を示し、背中をまるめたりうずくまったりする姿勢をとります。また激しい嘔吐や粘液便、下痢などの症状を呈し、症状が激しくなってくると急激に循環不全を呈し、血圧低下、低体温症をおこす場合もあります。また急性膵炎から多臓器不全に陥り、播種性血管内凝固(DIC)を引き起こした場合、死亡するケースもあります。膵炎は他の内臓の病気に比べ、診断が難しく、死亡率の高い病気であるため、十分に注意する必要があります。
原因
膵臓の炎症の程度と高脂肪・低タンパク食とのあいだには、直接的な関連があります。よって脂肪分の多い偏った食餌を食べている犬や肥満傾向にある動物に発生する傾向にあります。また、コルチコステロイド、利尿剤、あるいは潰瘍治療薬(シメチジンなど)を含む薬物も関連しています。また副腎皮質機能亢進症、や上皮小体機能亢進症、ウイルスや寄生虫の感染、腹部の手術なども原因になることもあります。くわえて、膵管の傷害によって周囲組織に酵素が漏出し、痛みを伴う炎症を引き起こすこともあります。膵臓疾患の雁患率は正確にはわかりませんが、検死結果から判断すると、全体の1%の犬に膵炎の症状があらわれています。急性膵炎は、一般的に肥満気味の中齢の雌犬に起こり、激しい痛みを伴います。
治療方法
膵炎の治療は困難を極めます。
十分な輸液と蛋白分解酵素の持続注入、炎症を鎮めるため、コルチコステロイドの使用も必要になる場合があります。また基本的に食餌を食べると膵臓から酵素がでてしまい、症状を悪化させる傾向にあるため、長期の絶食が必要になります。このため、中心静脈輸液や空回腸チューブによる栄養療法が必要になることもあります。万が一、膵炎により腸が壊死してしまった場合、開腹手術も必要になりこともあります。
予防日頃からバランスの良い食餌と適度な運動で肥満防止につとめ、脂肪分の多い食餌やおやつを与えないようにすることが大切です。
食餌
低脂肪、中程度の蛋白質、炭水化物を含む食餌が勧められます。